16.憎しみは最強のパワーである
自由
なんて響きの良い言葉だろう。
しかし自由であることは、また孤独と同義語だ。
私はこれからこの孤独と戦っていかなければならなかった。
住む家がみつかるまでは、友達の所を転々としたり、車やネットカフェを利用して過ごした。
そして幸運なことにも無償で名義を貸してくれるという人物がおり、家を借りられることになった。
名義は借りるだけで一切の迷惑はかけないと約束した。
晴れて住む場所は確保することができた。
家がない‥
それはとても不安だった。
まるで、世界中に一人、自分だけが取り残されている感覚だった。
まだ高校を卒業してまもない‥
どうして自分がこんな目に合わなければいけないのか?
分からなかった。
前世になにか酷いことでもしたのだろうか?
それにしても‥酷すぎる。
前世に悪いことをした仕打ちなのであれば前世の記憶を受け継がせるべきだ。そうでないと、反省にならないだろう。
そうでないと、理不尽だと自分は可哀想であると‥そう思うだけなのだから。
その後私は奨学金をいくつも借りながら、生活と学費をまかなった。
そして、無事に正看護師免許を取得した。
無我夢中で走り続けてようやくここまできた。
何度も挫折しそうになった。
何度ももう辞めてしまいたいと思った。
だけど母親への憎しみだけが私の原動力だった。
「ここで諦めたら何もかもおしまい、あの女の言う通りになってしまう。私は一人では何もできないと嘲笑われるのがオチだ。頑張らなきゃ、頑張らなきゃ」
憎しみだけが私を突き動かした。
看護師になりたい?
誰かを助けたい?
綺麗事だった。
私は‥ただ母親を見返してやりたかった‥
一心不乱に、目の前にあることをこなすだけだった‥。