7.11歳で気付いたことは母親に愛されていないということ
松山さんと付き合っている時は、松山さんのことを母親がそんなに好きなわけではなかった。
松山さんが母親のタイプではなかったためだ。
このため娘と松山さんが仲良くなってもなにも思わなかったのだろう。むしろ、仲良くして松山さんの気を引けばお金がもらえる。
私はその利用の一部に過ぎなかったのだろう。
だが、憲はどうだ?
松山さんとおやすみのキス、松山さんと一緒にお風呂‥
憲と一緒の部屋で寝る、寝返りで無意識に距離が近くなりキスしそうになる
同じことだろう。
なにがいけないのか、私にはわからなかった。
だって、松山さんも憲も父親と思おうとしたからだ。必死で。父親という存在がなにかもわからない状態で母親が喜ぶことを成し遂げようとしたまでだったのだ。
だが憲の時は母親は女として私に強烈に嫉妬したのだ。
まだ11歳の私に。そしてその嫉妬の矛先を全て私に向けたのだ。子供にとってこんなに、辛く恐ろしいことがあるだろうか?
憲と母親と同じ食卓でご飯を食べている時、私はあまり仲良くしては母親を怒らせるのだと解釈したため喋らなくなった。
ただただ母親の怒り狂った鬼のような表情がとても怖かった。もう怒らせたくない。だから憲と仲良くなりたくなかった。
だけど、母親がトイレに席を立った時二人きりになってしまう。こんな時は憲は気軽に話しかけてくる。
やめて‥
そう思いながらも無視することなんてできない。私は笑って返答した。そしてまた悲劇は起こる。
「私のいない時に仲良くして、男に媚びやがって!どういうつもり?!」
‥ちがう、ちがうよママ。そんなつもりじゃなかったの。
私が泣いて謝っても、母親は私を嫉妬の対象として攻撃し続けた。
まだ11歳の私になぜこのような仕打ちができたのだろう?
私は‥もう、疲れていた。
こんな状況に、こんな家族に、こんな母親に。そして憲が家に来なければよかったと思うようになった。私は母親から必要とされていない、邪魔な人間なんだと思うようになった。